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最高裁が部分的にではあれ労働条件について決定する立場にある派遣先は、その限りにおいて派遣労働者の組合からの団交要求に応じる義務があるとの判断を示している。
しかし法律自体にはまったく手がかりとなる規定はない。
結局、派遣法がこのような問題について、あらかじめ予見することが可能であったにもかかわらず対応する規定をおかなかったことに最大の問題があるといえよう。
しかし少なくとも、最高裁が限定的にではあれ、派遣労働者の組合が派遣先に団体交渉を要求できる場合を認めたことは、通常の労働者に比べではるかに根無し草的な不安定な地位にある派遣労働者にとって、連帯による労働条件向上実現の可能性を付与されたこととなり、その意義は大きい。
また、派遣先における就労がかなり長期にわたり、事実上派遣先の従業員と同様の状態になっている場合に、派遣労働者が派遣先との労働契約関係がすでに形成されていると主張することもある。
派遣業は浮き沈みのはげしい業界であるから、派遣先で就労している聞に派遣元の会社が倒産することも珍しくない。
したがって、派遣労働者としては、自らの地位を守るために派遣先との関係を法的に確保したいと考えるのは当然である。
しかし、これまでの法体系のもとでは、そのような主張が認められる可能性はきわめて低かった。
派遣労働者が派遣先の正規従業員と同様の業務に従事し、それが見分けがつかないほど一体化していたとしても使用者が派遣という形で労働者に業務に従事させていることの最低限の意味は、まさに雇用責任の負担を免れるという一点に存するからである。
したがって、派遣労働者についても、やはり、労働組合の結成などを通じて、連帯して自らの地位を守ることがどうしても必要となる。
改正労基法は、その内容がきわめて多岐にわたり、一概に「労働法の規制緩和」という評価でくくれない。
改正法案の提出に関わった中央労働基準審議会のH会長は、十数カ所に及ぶ今回の改正内容のうち、はっきりと規制緩和という範暗に属するのはほんの数カ所で、あとはほとんど規制強化といってもよい内容であることを指摘している。
たしかに、すでに述べたように新しい裁量労働制の対象業務はかなり範囲の広いものであるし、そのほかにも改正項目のなかには、期間雇用の最長1年を条件付きではあるが3年まで延長したこと、さらに一斉休憩の規制の解除を行政の許可ではなく労使協定の締結によって認めるなど一応規制緩和といえるものもある。
しかし、雇入れの際に使用者が労働者に書面をもって明示すべき内容として、これまでは賃金だけが義務づけられていたのに対し、労働時聞をはじめとする基本的な労働条件について網羅的に書面化するよう義務づけられたり、労働者の要望があれば解雇の理由を書面で通知することも義務づけられた。
また、時間外・休日労働協定に関しては、時間外労働時間数の上限が従来よりも厳しい監視のもとにおかれるとともに、協定の労使各締結当事者に対する行政指導が強化されている。
全体としてみれば、とうてい「規制緩和の一環」と評価するにはほど遠いといわざるをえない。
働く者にとっての改正労基法は、したがって、対応のしかたによって異なる様相を示すことになろう。
すでに裁量労働制について述べたように、労使委員会という事業所内の労使協議機関は、これまでの労使協定事項のほとんどをその決議で代える権限を付与されている。
改正された項目の多くも、実はこの労使委員会の決議をもって対応できる内容である。
三六協定も、大幅に内容が変更された1年単位変形労働時間制協定も、フレックスタイム協定も、そして計画年休協定札労使委員会さえ適切な対応をするならば、従業員の利益に合致する結果をもたらすことは十分可能である。
働く側にとって予想される最も理想的な改正法への対応は、労使委員会の労働者側代表を事業所内の労働者の過半数が実際に支持する形で選出し、これを支援することによって多くの人事関連制度に関与していくことである。
この場合、労働組合が自覚的な対応をするならば、それほど道筋は困難にはならないはずである。
問題は、1つには労働組合がこの労使委員会制度を的確に使いこなせない事態が生じた場合と、圧倒的多数の中小企業がそうであるようにそもそも企業に労働組合が存在しない場合である。
前者の場合には、労働組合の自己改革が不可欠の条件となろう。
組合員たる各労働者は、自分たちの声が労使委員会に正確に反映するよう活動することが求められる。
改正法が円滑に定着するかどうかの中心的なポイントの1つが、労使委員会の活動のいかんにかかっているのであるから、行政も、労働組合が安定している企業ではとくに、労働組合の労使委員会への積極的で適切な対応を指導するはずであり、これに呼応した組合員の活動も奨励されることが予想される。
しかし、組合のない企業における労使委員会制度の普及はなお軒余曲折を経なければなるまい。
たしかに、単なる労使協定の締結の場合と異なって、労使ともにこの制度への関心は高まるであろうが、これについては行政だけでなく、日経連や連合などの労使団体も積極的に対応していく必要があろう。
そして現場の労働者は、法の精神を体現した労使委員会の重要性について互助組織や親睦会などでも話し合いを重ね、実際に従業員の意思を体現して活動のできる代表者を選定する方法を模索しなければなるまい。
いうまでもなく、こうした活動の目的は、あくまでも労働条件制度の企業内での構築・運営に労働者が関与するルートを確保することにある。
したがって、労働組合の役割とは若干その位相を異にする。
労働組合は使用者との団体交渉を通じて労働者の労働条件や待遇を向上させることが目的であり、必ずしも労使が協力して制度設計等を行うことを機能として予定されてはいないからである。
以上のように考えると、改正労基法のもとでの労働者は、さしあたり企業内での就労を維持することを前提とするならば、裁量労働制の導入に限定されない常設の労使委員会の設立をめざし、これに積極的に関与することでまず制度面での利益確保・意向の反映をはかることが要請される。
制度への関与が確保されるならば、逆に個別化が必要とされる側面、つまりまさに裁量労働制や、採用・解雇の際の書面による必要事項明示などの個別労働契約に関わるシステムにも、追い詰められることなく対応しうる道が聞かれるであろう。
個別紛争の増加と労働組合職場で生き抜くためには、さまざまな新しい傾向への対処だけではなく、問題が起こってしまってからの対応も考えなければならない。
本来労働者の利益団体である労働組合は、労働契約から生じる組合員の苦情や紛争を処理するために、団体交渉、労使協議制あるいは苦情処理機関を通じて、さまざまな仕組みを用意している。
しかし、労働組合の組織率は現在では約2割強であるから、実際には、組合を通じた紛争処理機構を利用できない労働者が圧倒的に多い。
また、労働組合に組織されている労働者の場合でも、他の先進諸国と比べて、日本の組合の苦情処理機能は弱いといわれており、かつ、少数派組合員にとっては実際には問題解決が期待できないこともしばしばである。
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